2012/10/03

被害者側弁護士のノウハウの蓄積-全国をつなぐネットワークへ


2012/09/28(→こちら)に続き、被害者側弁護士のノウハウの蓄積についてです。

更に今考えているのは、1事務所にとどまらず、同様に被害者側を貫いている実績のある法律事務所間で知識、経験、ノウハウを共有することです。それは、もちろん、長崎にとどまるものではありません。全国をつなぐネットワークでなければならないと思っています。
原総合法律事務所は、地元長崎では、市民・中小企業の視点から関係する幅広い専門化のネットワークをネットワークながさきとして立ち上げ、常設の窓口お困りごと案内ダイヤルを立ち上げましたし(→簡単にはこちら)、関東と地方をつなぐアンテナオフィスの受け皿として、九州内の各県の最近の弁護士会会長経験者が参加するネットワーク九州を取りまとめました(→簡単にはこちら)。いずれも全国で初めての取組みで、ネットワークの創造は原総合法律事務所のキーワードです。

現在、全国の被害者側弁護士-それは、損保の顧問は行わず、被害者側の依頼だけを受け、かつ、豊富な経験と実績を持ち、医療の問題にも関与していける弁護士です。-の何人かには趣旨を説明し、賛同の意見をいただいています。
次は、この被害者側弁護士のネットワークが、原総合法律事務所の進む方向だと考えています。

2012/09/30

膝関節の前十字靱帯損傷による動揺性と後遺障害

前十字靱帯損傷のご相談は,東京03-5575-1400,長崎095-820-1500まで。

先日、膝関節の障害のご相談がありました。

関節の障害では、曲がらなくなったという相談が多いのですが、ときどき、ぐらぐらするという相談を受けることがあります。
曲がらなくなったというのは、可動域制限といって、これも測り方だとか、自動か他動かだとかいろんな問題があるのですが、ご相談の方は、可動域にはそれほど制限のない方でした。

ちなみに、可動域が3/4以下に制限されていると機能の障害として12級に、可動域が1/2以下に制限されていると機能の著しい障害として10級になるというのが、後遺障害の一応の認定の基準とされています。

この方は、事故で膝の前十字靱帯損傷(ACL)というけがを負い、膝がぐらぐらする(不安定性とか動揺性といいます。)後遺障害が残りました。

しかも、調査事務所からは、例によって画像所見がないという理由で前十字靱帯損傷も否定されていたのです。このこと自体、問題があるのですが、それはまたいつかということで、今日の話題は、関節の動揺性が交通事故の後遺障害として認められるのかという点です。

交通事故の後遺障害の認定は、労災の後遺障害の認定基準にしたがっているのですが、この労災の認定基準に、関節の可動域制限はあるのですが、実は、関節の動揺性が載っていないのです。そこで、可動域制限がないからと思って、あきらめる方が多いように思います。
しかし、あきらめることはありません。
労災の認定基準は、典型的な障害しか扱っていないので、それに載っていなくても、載っている基準に準じて後遺障害を認めることがあります。

この点で参考になるのが、身体障害の認定基準です。詳細は省きますが、身体障害の認定に当たっては、関節可動域の制限と並んで動揺関節も規定されています。
この動揺性で後遺障害を認めさせるのも、いろいろポイントがあって簡単ではありませんが、でも、可動域制限がないからといってあきらめる必要はないというのが、今日、お話ししたかったことです。

2012/09/28

被害者側弁護士のノウハウの蓄積-原総合法律事務所の場合


交通事故の損害賠償は、決して弁護士であれば誰でも簡単に扱えるような事件ではありません(以前ふれました。→こちら「どんな弁護士でも結果は変わらない?」)。
法律問題だけではなく、医学の知識も必要ですし、工学の知識が必要になる場合もあります。
そういう意味では、まさに「専門的」な事件です。

そのノウハウは、ともすれば、個々の弁護士の蓄積で終わっていたように思います。

原総合法律事務所では、所長弁護士原章夫は20年以上の交通事故の被害者側弁護士としての経験がありますが、1人の弁護士が対応できる事件には限界があります。
そこで、現在、原総合法律事務所には所長以外に3人の弁護士が在籍していますが、事務所内外での研修はもちろん、個々の相談や事件についても、所長が積極的に同席、関与し、そのノウハウの共有を図っています。
真に「専門」の名に値する法律事務所であることを、原総合法律事務所は目指しています。

2012/09/24

椎間板ヘルニアが見付かっただけでは・・・

椎間板ヘルニアのご相談は,東京03-5575-1400,長崎095-820-1500まで。

この病名ではちょっと・・・(2012/09/08→こちら)という記事で、あまり嬉しくない病名、症状名として、椎間板膨隆(ぼうりゅう)、椎間板ヘルニアを挙げました。
今回はその説明です。

背骨(脊椎)は、椎骨という骨と、椎骨と椎骨をつなぐ椎間板とからできています。
椎間板は軟骨でできていて、椎骨をつなぐクッションの役目をしています。もう少し詳しくいうと、腺維輪という硬い軟骨の囲いの中に柔らかい髄核という軟骨が入っています。

この椎間板が押しつぶされて、膨れあがってきた状態を椎間板膨隆といい、髄核が腺維輪を破ってはみ出した状態を椎間板ヘルニアといいます。
椎間板ヘルニアになると、はみ出した部分が神経を圧迫して、痛みやしびれが出てきますし、ひどい場合は麻痺も現われます。

そういうと、むち打ち損傷でも椎間板ヘルニアは起こりそうなのに、どうしてあまり嬉しくない病名、症状名なんだと思われるでしょう。

それは、椎間板ヘルニアは、年齢を重ねて弱くなった椎間板であれば、本当に軽い衝撃でも発生するとされているからです。日常のちょっとした動作でも発生するとされているので、椎間板ヘルニアが確認されたからといって、その原因が交通事故かどうかは分からないというわけです。
交通事故が原因であったことを確認するためには、事故直前のMRIでは椎間板ヘルニアがなかったのに、事故直後のMRIで椎間板ヘルニアが確認されることが必要です。しかし、事故直後はともかく、事故直前にMRIを撮っていることなど普通はありません。(ちなみに、以前も説明しましたが、MRIは身体の柔らかい部分を調べるときに有効で、椎間板ヘルニアはMRIで簡単に分かります。)

でも、事故前はなかった痛みやしびれが出てきていて、事故後、椎間板ヘルニアが見付かったのだから、この痛みやしびれには椎間板ヘルニアが関係しているのではと思われるかもしれません。
ところが、ここも難しくて、椎間板ヘルニアであっても、痛みやしびれを感じない場合があるというのです。つまり、事故前は痛みやしびれという症状がなかったからといって、事故前に椎間板ヘルニアがなかったということにもならないのです。

では、被害者側弁護士として、どう考えればいいのか。次回に続きます。

2012/09/22

悪質だから慰謝料を増額して!


よく受ける相談の一つに、あんなに加害者が悪質なのに、慰謝料は増えないのかという質問があります。

事故の原因が飲酒運転や信号無視など悪質だったり、事故を起こしたのが分かっていながらひき逃げしたり、謝罪しないばかりかお金目当てで病院通いをしていると侮辱するなど、確かにひどいと思う場合があります。
そんなとき、被害者として、普通の慰謝料の額では納得できないという気持ちはよく分かります。

でも、交通事故の慰謝料の額は、入通院の期間・日数や後遺障害の等級などでほぼ決まってしまいます。
交渉段階では、その「基準」を超える額を加害者側=損保会社から引き出すことは、まずできません。裁判所の基準に届くのがせいぜいでしょうか(というか、裁判所の基準に届くことも簡単ではありません。)。

ただ、裁判まで考えると、判決では、加害者側の悪質さを考えて、慰謝料を増額することがあります。といっても、増額する場合があるという程度なのですが。

そのような点を理解した上で、交渉で示された慰謝料の額には納得できないというのであれば、裁判に踏み切ることも意味があると思います。
実際、判決になれば、慰謝料だけでなく、ほかの損害項目も増額されることが多いわけですし、事故日から年5%の遅延損害金もつくわけですから。

2012/09/21

症状固定って何?

症状固定のご相談は,東京03-5575-1400,長崎095-820-1500まで。

交通事故に遭うと、それまで聞いたこともないような言葉が出てきますが、その代表が症状固定でしょうか。

これ以上の治療をしても、症状が良くなる見込みがなくなることを症状固定といいます。その固定した症状を後遺症とか後遺障害といいます。

この症状固定の時期は重要です。
というのは、症状固定の前後で賠償される損害が違うとされているからです。

例えば、治療費についていえば、症状固定前の治療費は賠償の対象ですが、症状固定後の分は支払ってもらえないのが通常です。治療は症状を良くするためのもので、症状固定により、以後、症状が良くならないのであれば、それは症状が悪くならないようにするための「リハビリ」であって、損害賠償の対象となる「治療」ではないというのが保険会社の原則的な考え方なのです。

また、症状固定までは、収入の減少分をそのまま休業損害として請求できます。ところが、症状固定後は、後遺障害の程度に応じた逸失利益の請求しかできないとされるの通常です。
ちなみに、逸失利益というのが、また難しいのですが、後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害がなかったらもらえたであろう収入のことです。詳しくは、改めて説明しますね。

2012/09/19

「勝ち」を約束すること


弁護士というのは、慎重というか、自分の言動に厳密に責任を持つ人たちなので、「必ず勝ちます」とか絶対に言いません。

良く「先生に依頼したら、(賠償額が)いくら増えますか?」と聞かれますが、可能性しか答えられないのです。
「最終的には裁判所が決めることですし、交渉でも相手がいることなので、約束はできませんが、裁判所の基準にあてはめればこれぐらいにはなるでしょうか。」というのがせいぜいなのです。

もし「私なら、これぐらいにはできます。」という弁護士がいたら、逆に心配です。

これは、あくまでも印象ですが、慎重な言い回ししかしない弁護士の方が、交通事故の難しさを良く知っている知識や経験の豊富な弁護士で、その知識や経験を駆使し、結果としてより良い結果を勝ち取り、依頼者の満足を得ていると思います。

でも、ほとんどの場合(やはり絶対とはいえないのですが。)、損保会社の最初の提示額は、裁判所の基準よりかなり低いので、弁護士が交渉したり、裁判することで、弁護士等の費用を差し引いても、「手取り」のプラス額はかなり増えます。
交通事故は、弁護士に依頼することで、弁護士等の費用を考えても費用倒れにならないことがほぼ確実な、唯一といってもいい事件だと思うのです。